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よい歯と食育インタビュー

インタビュー第1回「歯科と食育(後編)」

>>  前回 (第1回インタビューの続きとなります)

前回に引き続き、社団法人日本栄養士会専務理事の二見大介先生と株式会社ヘルシーピット代表取締役の杉本恵子様の対談です。今回は、「食育における歯科の役割」などを中心にお話を伺いました。


幼少の頃に食育を学ばせることは大切ですね。子供と成人の指導は違いがありますか?

二見理事…

 子供は将来に向かっての可能性がありますから、働き掛け甲斐はあります。成人はすでに自分の食生活を築いていますから、それを変えさせるというのは大変です。まして、楽しさを前面に出した時、大人達の多くは逆に馬鹿にしたり、自分の食生活を棚に上げながら、あんなこと出来っこないというような、このような意識を内に持ちながら進めていくことが多いですから、そういう意味ではどこに力点を置くかということをきちんと捉えないと出来ませんね。

杉本氏…

 最初は本当に普通の話をしていますが、そのうち人生相談になるんですね。
ですから、栄養士は専門家であって、本当は優秀なカウンセラーです。
その方の3回の食事を見ていると、その方の生活パターンが見えてきます。
それをだいたい3ヶ月間やりますので、奥様より誰よりその方のことがよく分かってきます。ですから、その方の年代、性別によって栄養指導のアドバイスを変えていくわけです。

現在の食育推進活動について評価できること、逆に、改善していかなければならないということはございますか?

二見理事…

 そうですね。今までの食育、栄養教育というのは、先程杉本さんのお話にあったように、五色運動などを考えても、あまりにも栄養素が中心でありました。栄養素というのは、目に見えなく、当然手で捕まえることが出来ない。そこにいくらアプローチしても、行動を変える起爆剤にはならないのです。そこで次の段階で、私たちは食品に注目して、3つの色であるとか4群であるとか、6群であるとか、そういうような形で働きかけてきました。しかし、それもいま一つパンチ力がないということで、現在では行動に注目した栄養教育に変わってきたわけです。食事というのは、私たちが毎食食べるテーブルのところに、セットされるものですから、それを切り口にした場合は行動を変えるという意味合いで、何かを改善する場合は具体的で分かりやすいんですね。

結果として、それは主食、主菜、副菜などの、これら核になる料理がきちんとそろっているかという見方なわけです。それは、人々に非常に分かりやすい。そのことを踏まえて、食事バランスガイドが作られたのです。私はさらに一歩それを進めて、生活の視点で食べ方というようなことを含めた捉え方をしていかなければならないと思います。どのような状態で食べるのか、よく子供の一人食べが問題になっています「孤食」ということがありますね。それは今まで私達が進めてきた、栄養素、食品、料理でも解決できないことです。ここにスポットをあてた栄養教育、食育のありかたと言うものを模索していかなければならないのです。このようなことが食育のレールの上に乗ってくれば、生活の視点からそれぞれにあった変え方ができるのだろうというように思っています。

杉本氏…

 私は、日本の良き文化というものが、ほとんどなくなってきたように思います。例えば人を敬うなど。今のおじいちゃん、おばあちゃんを見ているとそういうところをよくご存知なのです。それは食事の中にもありました。昔は母親が食事の時、緑がないからお野菜を食べなさいとかあったと思います。それが今の日本には無くなってしまいました。子供は塾に行かなければならないとか、お母さんも忙しかったりして。私は食事を通して、人間関係、家族関係を作りたいと考えています。

それから、例えばこれからおいしく食べる為には、歯がしっかりしていなければならないし、その為には親が歯ブラシをしっかり教えなければならない。

再び昔の日本を再教育していくのも大事な気がします。 一日の内で同じ事を3回もするのは、食事以外あまりないですね。 ですから、欧米食がいけないとか、お肉がいけないなど、栄養面のことだけでなく、 必ずお箸を使うなどといった文化に関わる面も教えていきたいです。昔のものを取り入れていくということを教えていきたいですね。

歯にお話を移します。食事の上で噛むことは大切ですか?

二見理事…

 噛むという事は食材を素材そのものの味として区分けできる機能です。料理というのは複合的に色々な食材が集まって構成されていますから、その一つ一つがその素材の本来の味を持っているのです。そういったことが、噛むことによって初めてわかるのです。

ですから、美味しいものを食べたいと思ったらやはり、よく噛まないとその味は体験できないと思っています。先日も歯科医師会の先生方とお話をしましたが、日本の公衆衛生の活動の原点は、歯にあったのではないかと思える程、歯の教育というのは、公衆衛生分野で、徹底しています。幼児期から歯みがき習慣を身につけさせられるのです。その結果が今日の子供達、また大人になってからも繋がっているのです。これだけ公衆衛生活動として、予防を前面において徹底的に行っているものは他にないように思います。ですから、そのノウハウというのは、冒頭にお話しました生活習慣病の予防にも当然繋がっていくことだろうなという気がしています。

杉本様は噛むことの重要性についてどうお考えですか?

杉本氏…

 私自身は噛むことは大切だと思っておりましたし、味わっていると思っていましたが、現実的に大事だと思ったのは老人に接してからです。よく噛むことで唾液が出るようになりますね。唾液は消化酵素ですから、噛まないと出ないです。老人はよく噛むんですね。80代の方に普通の食事を出しますと、皆さんよく噛むんです。

時々若い方も同じ食事を出しますが、噛まないんですね。早食いです。お年寄りは、よく噛んで味わっています。こちらも作る楽しみがあります。よく噛むということは、脳にも良いと言いますから、重要なのかなと思います。

柔らかい食べ物を好む若い世代は、不安かなと思います。
このような話をするとよく理解してもらえるのでよく話をしています。

食育を推進する中で、歯科との関連性はまだまだ少ないように思いますがいかがでしょうか…

二見理事…

 例えば、最近、国が妊産婦、乳幼児の食事のガイドラインを出しましたが、離乳食の重要性は単に栄養素を取り入れるだけではなく食べ方の訓練をする食事なのです。離乳食を上手に段階を追って、大人の食事に近付いていくのです。そのステップを踏まないと、本来の私たちの食べ方が健全に育たないと言われています。例えば、離乳食時に、たまに早く帰宅した父親が子供に自分の食事を与えることがあります。その際、子供は、家族が楽しく食事していますから、その様子で、自分もニコニコ美味しそうに食べますが、実際は丸飲みしています。本来、離乳食というのは、それだけでその子供の一日分の栄養摂取が出来るわけではないですから、それ以前に食べ方、素材の形態であるとか、あるいは柔らかさなどを段階を追ってきちんと教えるということが、大切なのです。そのことは、あまり意識されていない。栄養素の内容構成ばかりが全面に出てきて、食べ方が表に出てきていないということが、食育にも繋がってきているという気がします。

最後に、食の側の立場から歯科に向けて、コメントをお願いいたします。

二見理事…

 医科、歯科が二極化していることが不幸なことだと思います。もっと医学そのものが、医科と歯科が合体していったら、日本の医学が変わっていたのではと思うことがあります。特に予防医学的発想をすれば食育を扱う時に、医科と歯科の連携をどうとっていくかということが、これから歯科医師が本当に真剣に考えていかなければならないと思います。そうしなければ、歯科の領域の事柄が広く世の中で取り扱われていかないと思われます。いつも医科の後塵を受けて何かするということになってしまう。もっともっと評価を受けて然るべきだと思います。それには、自ら枠組みを壊していかないといけないと思います。

杉本氏…

 私は歯科の中で、もっと栄養士を使って欲しいと思います。現場で適切に一般の人達に伝えていくのが最適だと思います。栄養士がどれだけ言っても、歯科医師にはかないません。ですから、栄養士と歯科医師がコラボレートしていけたらいいなと思います。